2025/06/21
アスベストみなし工事とは?メリットデメリット含め基礎からわかりやすく解説

アスベストみなし工事とは、建築物の解体や改修時にアスベスト含有の有無を詳細な分析で確認せず、「含有あり」とみなして安全対策を行う工事のことです。主に昭和56年(1981年)以前に建てられた建物に使用された吹付け材や保温材、断熱材、耐火被覆材が対象で、労働安全衛生法に基づき厳しく管理されています。法人は、従業員の健康被害を防止しながら法令を遵守する責任があり、違反すれば法的リスクを負うことになるかもしれません。
みなし工事の定義と対象範囲
みなし工事は、詳細な分析調査を省略し、アスベスト含有を前提に工事を実施する制度です。対象となる建材は、昭和56年以前に使われた吹付け石綿保温材、断熱材、耐火被覆材、アスベスト含有サイディングボードなどが一般的に知られています。これらの建材については、専門資格者による目視調査や工事履歴の確認により適用判断がなされます。法人は関連法令の根拠を正確に理解し、適切に対象範囲を特定することが求められます。
なぜみなし工事が必要とされるのか
アスベストは微細な繊維が空気中に飛散し、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。過去には多くの労働災害や健康被害事例があり、企業はこれらのリスクを防がなくてはなりません。ただ、全ての工事で詳細分析を完了させることは時間的・経済的に負担が大きいため、含有可能性が高い建材をあらかじめ「含有あり」とみなして迅速かつ確実に安全措置を講じる仕組みが設けられています。この制度により、健康被害防止と工事の効率化を両立できます。
みなし工事のメリットとデメリットを理解する
みなし工事のメリットは、分析調査の省略で調査コストと工期を大幅に削減できることです。特に大規模解体や改修工事では大きな経済的利益となり、工事開始時から安全対策を徹底することで作業員の健康リスクも低減します。また適切な運用は法令遵守をすることにもつながりますし、行政指導や罰則のリスクを軽減することにもなります。
一方、実際にアスベストが含まれていなくても「含有あり」として過剰対応となるため、不要なコスト増加や作業の複雑化を招く場合があります。誤った適用は法令違反となり、罰則や企業信用の低下を招く恐れもあるため、専門資格者の助言を得て慎重に判断することが重要です。
みなし工事における事前調査と届出のポイント
みなし工事においても、築年数や建材の目視確認、過去の工事履歴の調査は必須で、専門資格者が飛散リスクの高い箇所を的確に特定します。調査結果を基に、安全対策計画を詳細に立案することが求められます。
届出は工事開始前に労働基準監督署へ提出しなければなりません。届出書には工事概要、使用材料の状況、安全管理計画を詳細に記載します。工事中の安全管理状況を記録し、工事完了後に報告書を作成・保管することも義務であり、企業はこれらに正確かつ迅速に対応しなければいけません。
みなし工事を安全かつ確実に進めるための実務ポイント
みなし工事を安全に進めるには、作業環境測定士やアスベスト診断士など専門資格者の関与が不可欠です。資格者は現場調査から作業計画立案、作業中の監督まで広範囲に携わり、最新の法令や技術知識に精通している必要があります。
安全管理では責任体制の明確化、作業員の安全教育、防護具の正しい着用徹底、アスベスト飛散防止措置、作業記録の保存と管理、定期的な内部監査や第三者検査が必須です。これらを怠れば、健康被害や法的リスク、企業の信用を失うことになりかねません。