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2025/06/21

アスベスト利用の歴史を解説!

アスベスト(石綿)は1920年代から日本で建材として使われ、2006年に原則使用禁止となるまで長い間つかわれました。1975年に吹付け材が使用禁止されたことを発端に段階的な規制が強化され、2012年に例外措置も撤廃されて完全に禁止されました。
そのため、2006年以前に建てられた建物にはアスベストが含まれている可能性が高く、特に築30年以上の建物を管理する法人は、解体や改修の際にアスベストが発生することを見越した対策をする必要があります。
 このことからあらかじめアスベスト含有の有無を把握していることが、建物のリスク評価や工事の事前調査、法的義務対応、工事費見積もりをするうえで非常に重要です。

段階的な規制から全面使用禁止までの流れ

アスベストは耐火性・断熱性・絶縁性に優れ、多くの建築で使われましたが、健康被害が明らかになったことで日本でも徐々に規制が進んでいきます。
まず1975年に飛散性の高い吹付けアスベストが禁止され、続いて1989年にはクロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)が製造・使用禁止となり、2004年には含有量0.1%以上の製品製造・輸入・使用が原則禁止とされ、2006年には使用の原則禁止が法律で明文化されました。しかしこの時点では「代替困難な一部製品」については使用が例外的に許可されています。
その後、2008年の大気汚染防止法改正で解体時の事前調査義務が強化され、2012年についに法律による完全禁止が実現しました。
このように30年以上の長きにわたり法整備が進んだため、建築年だけでなく施工時期や材料の入手経路を踏まえ、アスベストが含まれているかを判断する必要があります。法人は規制の流れを把握し法的リスクや工事対応を見極めることが重要でしょう。

https://www.mhlw.go.jp/content/000919437.pdf

石綿則に基づく事前調査の アスベスト分析マニュアル 【第2版】厚生労働省

年代別の使用傾向と建材の種類によるリスクの違い

アスベスト含有建材は年代で種類や用途が異なります。

1970年代以前は飛散性が高い吹付けアスベストが天井や柱の耐火被覆材として多用されており、最もリスクが高い「レベル1」とランク付けされています。
1980年代はスレートやPタイル、ケイ酸カルシウム板など非飛散性建材での使用が増え、「レベル3」とされリスクは低いものの解体時は粉塵が発生する恐れがあります。
2000年代初頭にも一部建材は、例外として使用が許可されていたため含有の可能性があり、2004年の製造禁止、2006年の使用禁止、2012年の完全禁止後も一定期間は在庫品や輸入材の流通が行われていたかもしれません。
単純に築年数だけで判断するのではなく、建材の種類や施工時期を考慮する必要があるわけです。

住宅・ビル・工場で使われやすかった箇所

アスベストが多く使われた箇所を建築ごとに紹介します。住宅では屋根材、外壁材、床材(Pタイル)、ビルでは空調ダクトの保温材、天井断熱材、機械室の保護材により多く使われました。
工場では主にボイラーや配管の断熱材、耐火壁の吹付け材、電気絶縁材としての使用が多く、煙突や排気ダクトにも用いられています。
使用箇所の把握は調査やリスク評価に直結するため、解体・改修前は専門業者による現地調査を必ずする必要があります。法人は図面や施工記録を参照し、アスベスト含有の可能性がある建材と場所の特定を確実に行うことが求められるのです。

築年数でアスベストの有無を判断可能か

使用時期と築年数の関係性

アスベストの使用時期と築年数には強い相関がありますが、築年数だけで正確に判断するのは難しいです。2006年以前の建物は含有可能性が高いものの、在庫建材使用や規制前後の過渡期に建築、使用されたものもあるため、単純に判断することができません。
一部改修で新旧建材が混在することもあるので、築年数は目安にとどめ、建材種類や施工履歴に基づいて判断するようにしましょう。
法人は複数物件の建設年と建材情報を一覧化しリスク管理やコスト予測に活用すると効果的です。

自己判断では難しい理由とリスク

アスベストの有無を築年数や外観だけで判断するのは非常に危険です。アスベスト含有建材は見た目では判別が難しく、誤った処理をすると法令違反や健康被害のリスクがあります。
法人は作業員や近隣住民の安全配慮義務、行政報告義務もあり自己判断での工事開始は避けるべきです。アスベストが飛散してしまった場合、損害賠償や企業イメージ低下の重大な結果を招いてしまうかもしれません。
疑いがある場合は必ず専門業者に調査を依頼し、法令に基づく対応をとるようにしましょう。

調査が必要なケースと調査方法

リフォーム・解体時に注意すべきポイント

アスベスト含有の可能性がある建物でリフォーム・解体する際は事前調査が法律で義務付けられています。有資格者による目視、設計図書確認、試料採取などが必要で、結果に応じ除去や飛散防止措置を行わなければなりません。
解体工事では作業開始前に調査結果を行政に報告しなければならず、怠ると罰則の対象となってしまいます。
この調査は工事計画や予算に影響するため、調査が必要かどうかを計画段階で把握し工程に組み込むことが重要です。

法人が押さえておきたい法的義務と罰則

アスベストに関する法的義務は石綿障害予防規則や労働安全衛生法に定められ、調査義務、掲示義務、作業計画提出、隔離・飛散防止措置など法人が遵守すべき内容が多くあります。
違反すると行政指導や是正命令、罰金(最大50万円)等のペナルティを受け、社会的な信用を失ったり、従業員に健康リスクが生じたり、近隣トラブルがおきたりといったアクシデントが起き、事業の継続に影響を及ぼします。
法人は最新の規制情報を把握し、担当者や関係部署と情報を共有し適切対応できる体制を構築することが不可欠です。

自分で判断せず専門調査で正確に把握を

法令遵守(石綿則、労働安全衛生法など)

アスベスト対策は単なる建材確認だけでなく、石綿障害予防規則や労働安全衛生法などの法令に基づく法人の「義務」でもあります。これらは従業員・作業員の健康を守り社会的責任を果たすためのものです。
工事前調査の実施、行政報告、作業計画策定、飛散防止措置、完了報告など一連の流れを怠らず丁寧に遂行し、コンプライアンス徹底につなげましょう。

安全配慮義務(従業員・利用者・周辺住民)

アスベスト対策には法令遵守だけでなく、安全配慮義務も重要となります。従業員だけでなく利用者や近隣住民の安全確保も法人の責任の一つです。
調査や除去の不備が健康被害を引き起こせば損害賠償を問われ、企業評価に大きな傷をつけてしまうかもしれません。専門業者への依頼や社内マニュアル整備など万全の体制をあらかじめ構築しておくようにしましょう。

資産価値の維持と信頼確保

アスベストの有無や対応状況は建物の資産価値や流通性に影響を与えます。適切な調査・記録・対応の有無は売買や賃貸時の信頼性・価格に直結するため、法人の戦略的管理領域です。
適切な対応を社外に示すことは企業姿勢や信頼性向上につながり、リスクマネジメントと企業価値向上の両立につながることでしょう。

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