2025/06/21
最新アスベスト調査の全知識!調査義務・対象建物・違反リスクと法人の責任まで徹底解説

アスベスト調査とは?調査が必要な理由
アスベスト調査とは、建物の解体や改修を行う前に、使用されている建材にアスベスト(石綿)が含まれているかどうかを確認する専門的な調査です。アスベストは1970年代から2000年代初頭にかけて、断熱性や耐火性に優れた建材として広く使用されてきましたが、微細な繊維を吸入すると重篤な健康被害を引き起こすことが判明しています。
とくに解体工事では建材が破砕され、アスベストが空中に飛散するリスクが高まるため、事前にアスベスト調査を実施することは安全対策の第一歩です。法改正により、一定規模以上の解体・改修工事では、アスベスト調査とその結果報告が義務化されました。この背景には、過去の健康被害の教訓と、作業員や周辺住民の安全を確保するという社会的責任があります。
もし調査を怠ると、行政からの指導や罰則が科されるだけでなく、企業の信頼性を損なうリスクにもつながるかもしれません。したがって、法人としては、調査の必要性を正しく理解し、計画的に対応を進めることが重要でしょう。
アスベスト調査が必要な建物の条件
制度改正により、調査対象となる建物の範囲は従来よりも広く、かつ明確になりました。建物の解体や大規模改修を検討している法人にとって、「自社物件が対象かどうか」を正しく判断することが、法令遵守とリスク回避のために大切です。
調査が必要となる主な条件
一般的に、以下の条件に該当する建物は、解体時にアスベスト調査が義務化されています。
・ 1980年代から2004年頃に建築された建物
・ 天井・壁・屋根などにスレートやケイ酸カルシウム板などの建材が使用されている
調査不要となるケースと注意点
一方、以下のような条件を満たす場合は、調査が不要と判断されるケースもあります。
・ 2006年以降に新築された建物(建材へのアスベスト含有が原則禁止以降)
・ 建材メーカーの製品資料で非含有が証明されている
・ 調査対象外として行政が認定した軽微工事(塗装・表層の追加等)
ただし、「自己判断での対象外扱い」は非常に危険です。誤認によって未調査のまま工事を進めた場合、後に行政指導や罰則の対象となることが考えられます。法人としては、建築確認申請日・建材納品書・施工図面など、複数資料を根拠に判断すべきであり、迷う場合は、専門業者や自治体へ事前に相談することをおすすめします。
アスベスト調査の流れと実施方法
アスベスト調査は、単に現地を目視するだけの工程ではありません。調査対象の選定から、調査方法の選択、報告書の提出まで、法的手順に沿って一貫した対応が求められる専門業務です。ここでは、その標準的な流れを3つの段階に分けて解説していきす。
1. 調査対象建材の選定と現地調査
まずは、建築図面や設計資料をもとに、アスベスト含有の可能性がある建材(スレート、成形板、吹付け材など)をリストアップを行います。次に、有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)が現地を訪問し、該当部位の状態を調査します。
2. 調査方法の選択:みなし判定と分析調査
・ みなし判定:建材の製造年や製品品番から、アスベスト非含有であると推定できるケース。費用を抑えられますが、客観的証拠(製品カタログ等)の提示が必須です。
・ 分析調査:建材の一部を採取し、専門の分析機関で顕微鏡やX線などによりアスベストの有無を確認します。費用はかかりますが、法的にも最も確実な方法です。
3. 調査結果の報告と提出
調査結果は「石綿事前調査結果報告書」としてまとめ、e-石綿システムなどを通じて都道府県または市区町村に提出します。
報告書には①調査対象建材の特定 ②調査方法と結果(含有/非含有)③調査者の資格情報 ④写真、図面、参考資料の添付といった情報が必要です。
報告義務に違反した場合は罰則や行政指導の対象となります。調査から提出までは通常1〜2週間程度が目安ですが、検体数が多い場合や再分析が必要な場合はさらに時間がかかる可能性もあるため注意しましょう。
調査会社の選び方と比較ポイント
重要なのは「価格」だけでなく、対応力・報告書の品質・実績・資格保持状況など、複数の軸で調査会社を比較することです。
1. 実績と資格の有無
・ 公共施設や大規模建物の調査経験があるか
・ 建築物石綿含有建材調査者や石綿作業主任者の資格保有者が在籍しているか
2. 見積もりの明確さ
・ 調査範囲、対象部位、分析方法、納期、再調査費用の有無などが明記されているか
3. 報告書の品質とサポート体制
・ 行政提出に対応した形式であるか
・ 添付資料が整備されているか
・ 修正対応やアスベスト除去の相談窓口があるか
4. 対応エリアとアフターフォロー
・ 地域に迅速に対応できるか
・ 出張費や再調査の費用が発生するか
・ 調査後の行政対応のフォローがあるか
違反リスクと法人としての責任
アスベスト調査の義務化にともない、調査不実施や虚偽報告といった法令違反に対して、法人には厳しい処分や賠償が課されるようになりました。ここでは、調査を怠った場合に企業が直面する可能性のある3つの責任とリスクについて整理します。
1. 行政処分・罰則のリスク
アスベスト調査結果の未報告や虚偽報告を行った場合、企業やその関係者には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(大気汚染防止法第18条)が科される可能性があります。
また、違反が認定された場合は以下の処分が想定されます。
・ 行政による業務改善命令や停止命令
・ 元請企業としての公共工事入札停止
・ 重大な違反であれば社名公表のリスクも
2. 元請・発注者としての法的責任
アスベスト調査は、実務を担当する下請業者だけでなく、元請企業や発注者側にも監督義務が課されています。例えば、元請企業が下請業者に調査を丸投げした結果、調査不備が発覚した場合でも、元請が「安全配慮義務違反」として訴訟リスクを抱えることがあります。
つまり、「調査を依頼したから安心」ではなく、調査結果を確認・記録・報告する義務が上流にも存在するということです。
3. 社会的信頼の失墜とブランドリスク
メディアやSNSの普及により、アスベスト調査の不備は容易に報道・拡散されます。特に、公共工事や自治体との取引がある企業においては、「コンプライアンス違反」の印象が強く残り、企業イメージに甚大なダメージを与えかねません。
このような事態を回避するためには、現場任せにせず、経営陣が率先してリスクマネジメント体制を構築することが必要です。
義務化時代に備えて、今すぐ確認すべきこと
2023年のアスベスト調査義務化により、すべての法人は、法的リスクと社会的責任の両面から、適切な対応を迫られています。今回は、アスベスト調査の必要性・対象建物の条件・調査の流れ・業者選定の基準・違反リスクまでを包括的に解説しました。
今後、社内で対応を進めるうえで、まず取り組むべき事項を以下に整理します。
今すぐ確認すべき5つのチェックポイント
1. 建物の建築年や改修歴から、アスベスト使用の可能性を確認する
2. 解体や改修予定の建物が、調査義務対象に該当するか精査する
3. 信頼できるアスベスト調査会社を選定し、見積内容と対応範囲を確認する
4. 調査結果を正確に報告書にまとめ、e-石綿システム等で行政に提出する
5. 社内フロー・ガバナンス体制を再確認し、コンプライアンス違反を未然に防ぐ
アスベスト問題は、過去に多くの健康被害と訴訟リスクを生んだ社会的課題です。今後も制度改正や取り締まりが強化される中、調査対応の遅れは企業経営に深刻なダメージを与えかねません。
本記事をきっかけに、法令対応・社内啓発・業者連携を速やかに進めていただき、貴社の安全・信頼・業務継続性の確保につなげてください。