2025/06/21
解体費用はいくら?鉄筋コンクリート建物の相場を解説

鉄筋コンクリート造(RC造)の解体費用とは
RC造は耐久性や耐火性に非常に優れ、公共施設や工場、オフィスビルなど幅広い用途で採用されています。一方で、その頑丈な構造ゆえに、解体作業は単なる建物の取り壊し以上に多くの工程や専門技術を要し、他の構造物と比較して費用が高くなってしまう傾向があります。
一般的な解体費用は、1平方メートルあたり2万円から4万円、1坪あたり6万円から13万円程度が相場ですが、延床面積が大きいオフィスビルや工場の解体では、総費用が数百万円から数千万円に及ぶことも珍しくありません。さらに、都市部の立地では交通を規制したり、周辺住民へ配慮をしないといけないため、同じ構造の建物でも地域や周辺環境により費用が大きく変わる場合があるため注意しなければいけません。また、RC造の耐久性が高いことは建物を長く保つには有効ですが、解体時には頑丈な鉄筋コンクリートの破砕や撤去が必要となるため、作業工程の複雑さや時間的コストが増大してしまい、それが費用増加の大きな要因となっています。
RC造の解体費用が高額になりやすい要因3選
要因の一つ目は機械リース費用や専門人員の人件費です。
RC造解体においては、特殊な重機の利用や経験豊富なオペレーターの確保が求められます。これに伴う機械リース費用や専門人員の人件費は、他の建築物解体に比べて高くなる傾向があります。
二つ目は処理費用です。
解体によって発生する主にコンクリート片や鉄筋などの廃材は、厳格に分別し適切に処理しなければなりません。廃材の種類や量に応じて処理方法が異なり、法令遵守のための手続きや作業も煩雑であることから、廃棄費用は通常より大幅に上乗せされるケースが多いです。
三つめは工事現場周辺への配慮による費用です。
作業中の騒音や粉塵が近隣に及ぼす影響を軽減するために防音シートや仮囲いを必ず設置する必要があります。特に都市部では重機の搬入が規制されたり、夜間作業が制限される場合が多く、これにより施工効率が落ちてしまい、工期が延びて結果的に費用がかさんでしまいます。
以上の要因に加えて、建物にアスベストが含まれている場合、専門業者による事前調査や除去作業が必要となり、その分のコストが大きく上乗せされるため、総費用が膨らむ大きな要因となります。
法人が把握すべき視点
法人は解体工事の見積もりを受け取る際、単純な金額だけでなく、その内訳や工事内容を詳しく確認することが重要です。たとえば、アスベスト調査や残置物処理費用が見積もりに含まれているかどうかで、全体費用に大きな差が生じることがあります。
また、業者ごとの工事範囲の違いや対応力、行政への手続き支援の有無なども評価ポイントとなります。単にコストに目を向けるのではなく、工程の明確さやリスク管理が徹底しているかを加味して総合的に判断することが、適切な発注と予算管理の観点から極めて重要です。
さらに、法人として、契約前に相手の業者の過去実績や評判を調査し、トラブル防止に努める必要があります。特に大型物件の解体では、施工体制や緊急時の対応力を把握することが安全・確実な工事実施につながります。
鉄筋解体の坪単価・㎡単価の相場
鉄筋コンクリート造の解体費用の相場は、坪単価6万円から13万円、㎡単価2万円から4万円程度とされていますが、これはあくまで平均的な目安に過ぎません。実際の費用は建物の種類や規模、立地条件など様々な要因により大きく変動します。
建物の種類と規模
建物の種類や規模は費用に大きく影響します。たとえば戸建てのRC造と比べ、マンションや工場などの中規模から大規模施設では足場の設置や重機の運搬が複雑になるため、コストが高くなりがちです。また、階数が多い建物では上階からの解体工程が増えるため、工期が長くなり単価も上昇する傾向にあります。
特に高層ビルの場合、解体中の安全確保や周辺環境への影響を軽減するための措置が複雑になることから、費用がさらに高額になることがあるかもしれません。
立地条件が単価に与える影響
解体する建物の立地によっても、都市部に位置する建物では、重機搬入の制限や交通規制、周辺建物への配慮が必須となり、養生費や搬入搬出費用が割高になることが多いです。一方、郊外や比較的広い敷地を持つ場所では作業効率が良いため、相対的に解体費用が低く抑えられる傾向があります。
また、交通の便や作業時間帯の制限、地域の条例なども立地条件による費用変動に影響を及ぼす重要な要素となります。
見積もりの構成要素は絶対に確認する
見積もりに含まれる単価は、処分費、人件費、仮設費、重機費など様々な要素を含んでいます。単価の数字だけで比較せず、これらの構成要素が含まれているかどうかを把握することが法人にとって重要です。
詳細な内訳を比較し、過不足がないかをチェックすることは、見積もりの透明性確保や予算オーバー回避に効果的です。
廃棄物処理費
解体によって発生するコンクリートガラや鉄筋などの廃棄物の分別、搬出、処分にかかる費用は、廃棄物の種類と量、処分場までの運搬距離などによって大きく異なります。
法令遵守の観点からみても、廃棄物を適正に処理することは費用に重要です。不適切な処理は行政指導や罰則の対象となるため、処分業者に関しても信頼できる業者を選ぶようにしましょう。
アスベスト調査・除去費
アスベスト含有建材が存在する場合、事前調査や除去作業を要し、これには特別管理産業廃棄物としての処理も含まれます。建物の築年数や用途によっては、調査・除去費用が数十万円から数百万円に及ぶこともあります。
近年は法改正により事前調査が義務化され、調査を実施していない状態での着工は重い罰則が科されるようになったため、調査計画を早い段階で構想することがもとめられます。
その他の費用(地中埋設物、残置物処理 等)
基礎コンクリートの深さ、地下に埋設された配管や設備の撤去も追加費用の要因となります。
また、残置物の撤去や清掃作業が発生した場合は別途費用がかかり、想定外のコストが発生する可能性もあるため、予算にはあらかじめ十分な余裕を持たせておきましょう。
アスベストが含まれていた場合の対処法
鉄筋コンクリート造の建物を解体するにあたって、最もコストとリスクに大きく影響を与える要素の一つがアスベストが含まれているかどうかです。特に昭和50年代以前に建てられた建物では、吹付け材や断熱材にアスベストが使用されている可能性が高いため、事前に考慮に置いた対応が必要です。以下にアスベストが含まれていた場合の対処法を段階別にご紹介します。
調査フェーズ
アスベストの使用有無を確認するには、専門業者による事前調査・分析検査が必要になります。通常、1検体あたり1万から2万円程度の費用がかかり、2022年の法改正以降、調査が義務化されたため、法人も必ず調査をする必要があります。
調査は建物全体の安全管理計画や除去作業の基礎資料となるため、綿密な調査計画を作成し、確実に実施するようにしましょう。
除去フェーズ
アスベストが含まれていた場合は、法律に基づき特定建築物石綿含有建材除去作業として厳密な手続きが必要になります。作業員の保護具装着や密閉空間での作業、飛散防止措置の徹底など安全対策を講じる必要があり、1件あたり数十万円から100万円を超える費用がかかることもあります。
この段階では施工管理や周辺環境の配慮も重視されるため、委託する専門業者の技術力や経験が費用と品質に直結します。
廃棄フェーズ
アスベスト廃材は「特別管理産業廃棄物」として扱われ、許可を得た専門業者による運搬・処分が義務付けられています。運搬距離や量によりコストは変動し、通常の廃棄物処分費より費用が約2~3倍ほど高額になることが多いです。
不適切な廃棄をしてしまうと法的に罰せられてしまう上に、環境汚染や健康被害の原因ともなるため、確実に適切な廃棄方法をとれるようにしましょう。
法的リスクと予算への影響
もしアスベストを不適切に処理してしまうと、大気汚染防止法や労働安全衛生法違反となり、罰則や行政指導の対象となってしまいます。調査を怠って着工した場合、工事の停止や追加調査命令が下されることがあり、かえってスケジュールや予算に大きな影響を及ぼします。早い段階でリスクを把握し、法令遵守と安全管理を徹底することで、トラブルを防止しコスト抑制を図るようにしましょう。
費用を抑える5つのポイント
鉄筋コンクリート造の解体費用は高額になりやすいため、法人は戦略的なコスト管理を行う必要があります。以下の5つの点が、不要なコストを削減するためのポイントです。
① 相見積もりを複数取得する
1社に絞らず3社以上から相見積もりを取得し、価格だけでなく内訳項目の有無や単価設定、アスベスト対応の有無なども比較検討するようにしましょう。
複数業者の見積もりを比較することで、その価格が妥当であるかを判断しやすくなり、不要な費用を抑えることができます。
② 解体のタイミングを見極める
解体業の繁忙期は、一般的に2月から3月頃とされています。これは、年度末にあたるこの時期に、公共事業の締め切りや一般企業の決算期が重なることが主な要因です。それに伴い、この時期は工事費用も高騰する傾向があります。余計なコストを抑えるためにも緊急の案件でなければ、繁忙期の発注は避けるのがポイントです。
[参考] 繁忙期と閑散期の時期について
繁忙期:2月~3月(年度末)
要因
・ 公共事業の年度末締め切り:3月末までに工事を完了させる必要があるため、多くの公共工事が集中します。
・ 一般企業の決算期:この時期は企業の決算に向けた準備が進むため、オフィスや工場などの解体工事の依頼が増加します。
・ 引っ越しシーズン:3月は引っ越しの多い時期であり、それに伴って住宅やテナントの内装解体工事も増えます。
閑散期:4月~6月頃
年度末の繁忙を終えた4月以降は、新年度に入り工事依頼が一段落するため、比較的落ち着いた時期となります。
その他の閑散期:6月~9月頃
この時期は梅雨や夏季休暇の影響で工事が進みにくく、工期が遅れがちになるため、依頼が減少する傾向があります。
③ 補助金・助成金を活用する
老朽建物の除却やアスベスト除去に関しては、自治体によって補助金制度が設けられている場合があり、条件を満たせば数十万円から100万円前後の支援が受けられることもあります。
着工前にこれらの制度の有無をしっかりと確認し、最大限活用するようにしましょう。
④ 必要以上の付帯工事を避ける
外構撤去や舗装解体、不要な残置物撤去など「ついで」の発注は予算超過の要因となります。発注前に工事の目的を確認し、本当に必要な工事なのかを判断するようにしましょう。
分離発注や工事内容の見直しで、コスト削減に直結します。
⑤ 実績豊富で資格のある業者を選ぶ
費用の安さだけで選ぶと、後から追加費用や工事トラブルなど思わぬリスクが生じるかもしれません。必ず建設業許可や産業廃棄物収集運搬許可、アスベスト除去の実績を確認し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
解体前に必要な準備と注意点
RC造解体を円滑かつ適正に進めるためには、費用や工法の検討より前に事前準備を徹底することが不可欠です。法人担当者は関係法令の遵守や現場調整、社内外の関係者との連携を含め、多面的に準備を進める必要があります。以下に主要ポイントをまとめました。
① 行政手続きの確認と届出
延床面積80平方メートルを超える建物解体では、建設リサイクル法に基づき「分別解体等の計画届」を提出する義務があります。加えて、アスベスト含有建材がある場合は大気汚染防止法に基づく「石綿使用建材調査結果報告」も必要です。
これらの届出は工事開始7日前までに行わなければならず、遅延すると工事遅延や行政指導につながってしまうかもしれません。業者に丸投げせず、法人も法的責任を理解して事前準備に関わりましょう。
② ライフラインの停止手続き
電気・ガス・水道・電話回線などのインフラは工事開始前に停止・撤去手続きを済ませる必要があります。特に、都市ガスの閉栓は立会いや予約が必要なケースが多く、スケジュール管理が求められます。
不十分な手続きで工事に入ると、ガス漏れや漏電の重大事故を招いたり、工事遅延の原因になるため工程表と照合し余裕を持って対応するようにしましょう。
③ 近隣への説明とトラブル予防
解体工事は騒音、振動、粉塵を伴い、近隣住民や周辺事業者への配慮を欠くとクレームや工事中断、行政指導に発展する可能性があります。
着工前の挨拶回りをしたり、工期・作業時間・連絡先を記した説明文書の配布をするなど、誠意ある対応を心掛け、地域との信頼関係を構築するようにしましょう。
④ 残置物・大型設備の整理
工場や倉庫、オフィスに残る什器、大型機械、書類、可燃物などの残置物は解体業者の範囲外である場合が多く、別途費用や委託契約が必要になることがあります。
法人は可能な限り事前に整理・撤去し、産業廃棄物の場合は専門業者手配も視野に入れ、コスト削減と工程円滑化を図りましょう。
⑤ 工事範囲と業者責任の明確化
「ここまでやってくれると思っていた」という認識のズレはトラブルの元です。工事開始前に工事範囲や業者責任範囲を明文化し、見積書や契約書で合意を得ることが認識のずれを防ぐことにつながります。
口頭の確認や曖昧な取り決めを避け、不明点は事前に書面で質問し回答を記録として残すことでトラブルを防止しましょう。
解体費用を適正に把握し、安全・確実に進めるには
鉄筋コンクリート造の解体は単なる工事費の問題にとどまらず、予算管理、法令遵守、リスク管理など多面的な課題が絡みます。特に次の3点に注意を払うことが成功の鍵です。
① コストを正しく認識し適切な業者を選ぶ
費用の単価は表面上の数字だけでなく、内訳や条件で大きく変わるため、アスベスト対応、残置物処理、養生費など含む見積根拠を比較できる能力が必要です。
② アスベストリスクと法的義務の早期把握
アスベストの有無により費用とスケジュールは大きく変わります。法定調査と報告義務を確実に履行しないと罰則や工事停止のリスクがあるため、早めに調査計画を立てるようにしましょう。
③ 準備段階での社内連携とスケジュール管理
行政手続きや近隣説明、ライフライン停止など工事には様々な準備が必要です。担当を明確にし工程表やToDoリストで管理することで、トラブルや追加費用の発生を最小限に抑えるようにしましょう。